加賀のお化け物屋敷
安永6年の頃、加賀の国、七尾という所に大野という一人の俳人があった。
いつの頃からか、この大野氏宅に幽霊が出るという噂がされるようになっていた。
ある日、近所に住む人が「ご用心までに申し上げておきますが、昨夜用事があって出ましたところ、怪しい火を灯した人が御宅
の中をあちこちと歩いているのをお見かけしました。ずいぶんにお気をつけなさい」と言って帰っていった。
大野氏は世の中に幽霊などあるはずがないと、そのまま打ち捨てていた。
2、3日のち、晩に家の下女が所要で裏の土蔵の前へ行った。すると突然、「あっ」と言ったまま気絶してしまった。
声を聴いて駆け付けたところ、下女はうつむきになって倒れている。水を吹きかけたり、薬を含ませたりして介抱したところ、ようやくに目を覚ました。
一体何が起きたのかと尋ねるに、下女は震えながら「青い火が地上1尺ばかりのところをふわふわと行くかと見ていたら、そのあとから、
真っ青な顔の恐ろしげな人がついてきて、私を睨み付け、あちらの薪の中へ入ってゆきました」「ああ恐ろしい、まだ目の前にいるようだ」
というので、さっそく下男らに言いつけてその薪楽天 をどけさせてみたが、何一つ怪しいものは出てこなかったそうだ。
最終更新日: 2014-08-17 20:01:37