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オリジナル怪談 第3話:合コン

今週末も合コンだ。
20代も後半にさしかかったのに、まだ理想の男に出会えていない。
数年前までは余裕があったが、20代後半になった今ではもう恥も外聞もない。チャンスがあれば首を突っ込む。数うてばそのうちきっと当たるだろう。
メンバーは私と由美と香織の3人。以前は5人だったけど、一人抜け、二人抜け...3人に減ってしまった。
二人になると合コンもしにくいから、あと一人抜けたらメンバーを補充しないといけない。
とはいえ新メンバーもなかなか見つからない。次に抜けるのはなんとしても自分になりたい。
いろいろの意味で焦りを感じるのだ。

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腕が多い

駅を降りると、集合場所にはすでに二人が来ていた。私は服選びに手間取ってちょっと遅れてしまったのだ。
「遅いわよ明日香」二人が口をそろえる。
「じゃ、いつものやろうか」いつものとは円陣だ。丸くなって腕を突出し、手のひらを重ねて「今日決めるぞ!、おう!」とやる。
3人では少なすぎるが、5人いたころからの習慣だ。
いつものように手を重ねて....「あ!」思わず声を上げてしまった。

手が、4つある。

「どうしたの明日香」二人が怪訝な顔でこちらを見る。
「あ、いいえ、ネイルがはげかかってるのに気付いて」とりあえずの言い訳をしてその場を取り繕った。

私にはあまり強くないけれど、霊感がある。
こうして数人で集まって騒いでいると、霊が仲間に加わってくることは、過去にも何回か経験したことがある。
都市伝説でも時々ある、喫茶店へみんなで行ったら、水とおしぼりが一つ多く出てきた。とか、ああいうたぐいのものだ。
私も数回、喫茶店やファミレスに憑いてこられた経験がある。
最初の時は驚いてしまい、つい口に出してしまった。
すると友達が、「霊なんて煽げば飛んでゆくわよ」と言って、霊の座っている席にメニューを煽いで風を送ったことがあった。
霊がみるみる怒り出すのが分かってどうなることかとひやひやした。
こうした霊は単に一緒に騒ぎたいだけなので、知らないふりして騒いでいれば何の害もなく去って行ってくれることがわかったので、 以後は気付いても知らぬ顔をして友だちとふざけているようにした。にぎやかにしていれば霊は満足するし、解散すれば霊もどこかへ行ってしまう。
きっと他の楽しそうなグループに憑いてゆくのだろう。
合コンでこうなることは初めてなのだが、気負うことはない、普段通りにしていれば今回も満足して去ってゆくに違いない。
これまで通り、気付かないふりをしておくことにした。

もう一体

居酒屋に入ると、男性グループの方は先に座って待っていた。
にこやかに笑って挨拶する。
と、その時、またもや声を上げてしまった。

3人の男性の隣に黒い影が見える。霊だ。あちらのグループにも霊が憑いてきたのだ。

「あ、」と声を上げたのは私だけではなかった。霊の隣にいる男性も、私の隣にいる霊に気付いて驚き、声を出してしまったのだ。
二人して驚いていると、他のメンバーが声をかけてきた。
「ええ?! 知り合いなの?」他のメンバーがリアクションに驚く。二人にしか見えていないようだ。

「あ、いや、従妹にそっくりだったもので」男性がその場を取り繕う。
「あのう、兄の友達に似ていたので」私もとっさにでまかせを言う。

合コンは人間6人、霊2体の不思議な参加者で始まった。
女三人の端が私。その隣に霊、この霊も女。
対する男たち、私の前にさっき声を出した人。隣の霊は男性のようだ。
私と向かいの人は、隣のことが気になってしかたがない。
他のメンバーは私たち気が合っていると勘違いしたようで、自分たちだけで話に興じている。
霊は霊同士で、なんだか楽しそうだ。

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そうこうしている間に合コンはお開きになった。
「じゃ、私たちは次行くから」
そう言って、他の四人は私たち二人を置いて二次会に行ってしまった。
霊たちもどこかへ行ってしまった。
訳の判らぬまま、二人だけが取り残された。
「あのう、なんだったのでしょう?」
「なんだったの?」

二年後

そんなことがあって、今の人と付き合い始めた。3か月後には結婚式を挙げることになっている。
あのころのメンバーもそれぞれ落ち着いていて、全員を式に呼ぶことにした。
ノートに招待する人の名前を書き込みながら、彼に尋ねた。
「ねえ、あの幽霊さんたちのこと、覚えてる?」
「ああ!、覚えてる。今どうしてるのかなぁ」
「結婚式に呼べないかしら...」
「もうこの世にはいないかも、二人で幸せになって成仏してしまったんじゃないかな」
彼が歯を見せて笑った。
「きっとそうね」
幸せって、死んだあとからでも見つけられるものなのだろうか?
ノートに名前を書き加えながら、フライングで出来てしまった赤ちゃんのいるお腹をさすってみた。

最終更新日: 2018-07-18 05:11:37

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Author: Tomoyuki Ito

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