肥満体型の人の原型型紙補正
文化式などの原型型紙製造方法で得られるパターンは、標準的な体型の人にはよく合いますが、標準外の人には合わない場合が多いです。
今回97人分の人体3Dデータを入手したので、こうした標準外の人の原型型紙楽天 を3DCADを使って補正する取り組みをしています。
前回はバストの大きい人の型紙を補正しましたが(こちら)、今回は肥満体型の人の原型型紙を補正します。
こんな体型の人です。
CADと人体データと原型型紙
人体3Dデータは産業技術総合研究所 AIST/HQL人体寸法・形状データベース2003こちら
を利用させていただきました。男女97人の3Dデータが入っているデータベースです。
このうち2名ほどの女性がいわゆる肥満体型でした。そのうちの一人のデータを利用します。
使う3DCADは私が開発している洋裁CADです。趣味用のものですが、初歩的な三次元モードも備えています。
まずCADに文化式新原型女子の型紙を読み込みます。
洋裁CADはパラメトリック形式のCADなので、通知を変えると形状を変えることができます。
文化式新原型女子は、バスト、ウエスト、背丈の三つの数値があればその人用の原型を製図することができます。
3Dデータに添付されている寸法表を読んでこれらを入力しました。バスト1040mm、ウエスト900mm、背丈420mm。
バストよりウエストの方が大きい人を探していたのですが、さすがにそこまで太った人は見つかりませんでした。
この人が97人の内の女性の中で一番太っている印象を受けたので採用しています。
型紙の変形ができたら、3Dモードに入って、人体3Dデータを読み込みます。スケールは1=1mmで洋裁CADと一致しているため変更する必要はありません。
座標系は異なっているため、回転移動する必要があります。
ボディを置いたら周りに型紙を配置して、縫い合わせを設定すれば、ボディに原型型紙を着せることができます。
補正なしの問題点
文化式新原型女子の原型型紙にパラメーターを入力して、人体データに着せたものがしtらの画像になります。
画像から、襟ぐり後側、袖ぐり後側がきつい、BPがずれている、いかり肩(この人だけ?)、肩がはみ出ている、肩甲骨の位置がずれている(というより肉で埋もれて場所が判らない)
着装画像を見て、ざっとこのくらい問題点が見つかりました。ひとつずつ順番に修正していくことにします。
襟ぐりと袖ぐりの修正
肉がたくさんついているのだから襟ぐりと袖ぐりがきつくなるのは自然なことだと思います。まずこの部分を広げてみました。
前身頃の高さが足りないようにも見えたので、前身頃の高さも同時に少し伸ばしましてみました。
型紙はこんな感じになりました。
前身頃を5㎜高くする、襟ぐりの後ろを15㎜脇を10mm広げる補正をしています。
肩幅と肩の傾きの補正
肩から少しはみ出しているのと、人体データが明らかに怒り方なので修正してみます。
傾きを5°減らし、肩幅を15mm短くしました。
いかり肩なのは肥満の人の傾向がそうなのではなく、この人の持っている特徴かもしれません。
あるいは、計測時に摂った姿勢の影響で肩をすぼめているのかもしれません。
型紙はこんな形になりました。だいぶずれてきましたね。
バストポイントの修正
バストのダーツ開始位置が、バストポイントからかなり外れているので、高さを変えました。50mm上にあげています。
洋裁CADの3Dモードはまだ作成中の部分があって、布の物性を正しく再現できていないです。
布は3D内で実際のものより伸びやすいので、実世界のバストポイントと多少ずれていると思われます、なので、弧の位置は正確ではないかもしれません。
バストポイントは50mmも上に上げたのですが、まだ上げ足りないです。3Dの世界と実際の世界との差を確かめてみたいものです。
背中ダーツの角度調整
肩甲骨の部分の膨らみがお肉に埋まってしまっていて無いので、肩甲骨の頂点から伸びる背中のダーツの開き角度を小さくしました。
ダーツをなくせばよいのですが、無くすとCADがエラーを吐くので、角度を極小さい値にするにとどめました。
これで背中がスッキリしました。
型紙はこんな感じになり、補正なしとの差が大きくなってきました。
バストダーツの角度調整
脇の下の部分の布が余っているのでバストのダーツの開き角度を広げて余分な布を取り込みました
これで不具合箇所が直せました。
補正前後の比較
補正前後を比較するとこんな感じです。
上が補正前、下が補正後です。
下は補正後の人体断面です。よく体にフィットしていますね。
最終更新日: 2020-08-01 23:30:38