玉利式巣箱と青柳式巣箱
玉利式巣箱と青柳式巣箱楽天
100年くらい前の巣箱は、玉利式と青柳式が主流のように思っていたのですが、
国立国会図書館近代デジタルライブラリー
でこれらの巣箱に関する記述をやっと見つけました。
最近蜜蜂飼育法
という本のP101~P108にかけてです。
以下、本文を引用してみましょう。
玉利式巣箱と青柳式巣箱の違い
-引用-
わが国においては明治20年頃に玉利博士が泰西先輩の形式に倣うて造られたる巣箱あり、
後に到りては青柳浩次郎氏の造られたる巣箱がある世人は前者を玉利式巣箱と呼び
後者を青柳式巣箱と呼んで居る、其外は多少の形式を変えて何々式など自称して用いて居る者もあるが
、もっとも広くわが国に用いられているのは玉利形と青柳形とである、
両者とも元より別段自己の創見に係るところはなく皆泰西諸先輩の形式を取捨して作られたまでのことであるが、
玉利形は其のもっとも粗なる形式をとりたるもの青柳形は其の精なる形式によりたるの相違があるのみ、
今其粗なるものと其精なるものとの代表者として両氏の巣箱をここに紹介することにしよう。
-引用-
なるほど、青柳式は精密、玉利式は簡易な巣箱であるのですね。
しかし、「元より別段自己の創見に係るところはなく」とは手厳しいですね。
以前に見つけて復元した「吉田式巣箱」も青柳式の亜流なのでしょうが、
「其外は多少の形式を変えて何々式など自称」とこれまた厳しい評価です。
私から見ると吉田式巣箱はすばらしくよく出来ていると感じるのですけど。
青柳式巣箱の詳細
-引用-
○青柳式巣箱の説明
第18図甲は即ち同巣箱全体を装置したものであって胴と蓋と台と、
2つの3角板とから成り胴の中には10枚の巣枠を入れている。台8図乙は右の巣箱を分解したものである。
図中aは巣箱の胴で蓋と底にともになき空胴である、これに用いる板の厚さは厚ければ厚い程外圏における
寒暑の影響を受けることが少ないからなるべく厚いほうがよいことは勿論のことで少なくとも仕上げ
6分(18.0mm)の厚さのものを用いなくてはならないこととしている、胴の内圏の広さは1尺2寸4方(360.4mm)とし
高さを8寸4分(252.3mm)とする、そして胴の上縁をば内側3分を3分(9mm)の深さに削り下げて置いて巣枠の押さえとするのである。
Bは巣枠の巣箱の中にいれ之に巣脾を営ましむべきものである、高さは胴の高さと等しく8寸4分(252.3mm)とし
長さは1尺1寸4分(342.3mm)只上桟のみは両端を挺出して長さを1尺2寸6分(378.4mm)とし胴の上へ切り下げられたる
縁へ掛けるようにしたのである。
そうすると枠が胴に接するところに丁度両方に3分(9mm)づつの隙を生ずるわけである、
この隙は蜂の通路として必要なる間隙である、この枠は全て仕上げ3分(9mm)の板をもって造り周囲の幅は8分(24.0mm)とし
両側の桟の上部2寸(60.1mm)ばかりの間即ちイ部のみ特に広くして1寸1分(33.0mm)とする、
枠の幅を8分(24.0mm)としたは巣脾の厚さに等しくしたので両側の桟の上部のみ特に1寸1分(33.0mm)としたのは枠と枠とを
接着しても巣脾と巣脾との間に丁度3分(9mm)という蜂の通路として適当の間隙を残すためである。
上桟のロ部は特に倒3角に削って蜂の営巣工事を起こす足場としたのであるそれから、
縦横に鉄線を張ったのは巣を強固に保たんがためである、この枠を1つの巣箱に10枚入れるのであるそうなれば
丁度1寸だけの余裕を生ずるわけであるがこの間隙は後に巣脾を入れたり出したりするときに必要なる間隙である。
Cは巣箱の台高さ5寸(150.2mm)広さは胴の外園と等しくし、長さは胴より3寸(90.1mm)ほど長く前方に出るようにして蜂の出入に
便利を与えてある底板は前方に引き出し得るように両側に溝を設けて之に差し入れておく
この溝は台の周園の上端より3分(9mm)下げて設けなければならぬ、底板は引き出しうるようにしておけば、
これさえ引き出せば巣箱を動かさずして底板の掃除が出来る従ってわずかの労力で巣箱を常に清潔に
保つことが出来る。前面の入り口にはDの如き3角板を当てて巣門の広さを調節することにしてある。
巣箱の下端と底板との間には丁度3分(9mm)の隙を保っている訳である、
これまた蜂の通路として存したるにすぎないEは蓋であって全体の広さを1尺8寸(540.5mm)4方くらいし、
屋根型にしたのは雨雪を防ぐに都合が善いからで、内に二なる桟を打ちたるは胴に嵌るに都合よくしたものである
蓋に用いる板は胴と等しく仕上げ6分(18.0mm)くらいの厚さにするものが善い、さて之を組立つるには、
地上に煉瓦か何か適当の基礎を置いて其の上へ台を安置し、台に胴を載せ之に巣箱を挿入するのであるが
巣枠の向きは左右に並列しても或いは前後に並列しても善い、余は常に前後に並べている。
巣枠を入れたらばこの上に新聞紙一枚を2つ折にして覆い蓋をする、
それから前面には3角板を2枚ほどおきて巣門を調節するのである、
3角板は大小何個も造りおきて寒きときは巣門を狭く、
暑き時は広く随時調節の出来るようにするが便利である。
-引用-
現代の西洋蜜蜂の巣箱よりは小さくて、日本ミツバチのものよりは大きいようです。
本の次章では、蜜蜂は山で捕まえる云々とあるので、この巣箱で飼うのは多分日本ミツバチ楽天 でしょうね。
もしかしたら、区別せずに飼っていたかもしれません。
巣の底板をスライドして掃除を容易にしているところは日本ミツバチ用ってことでしょうか?
さて、寸法が記載されているので、図面に起こしてみました。
玉利式巣箱の詳細
-引用-
○玉利式巣箱の説明
第19図Aは其の全体の装置を示したものでBはその巣枠である。
胴は其の外園にて長さ1尺5寸(450.5mm)ないし2尺幅1尺3寸8分(414.4mm)高さ9寸(270.3mm)であって
8分(24.0mm)板を以って造り前面下辺の中央には幅4分(12.0mm)長さ2寸(60.1mm)くらいを切り取りて巣門にあててある、
巣枠は両側の桟の長さを8寸3分(249.2mm)とし下桟の長さを1尺1寸2分(336.3mm)但し上桟のみは1尺2寸8分(384.4mm)にして両端を挺出し
胴の上縁にかかるように出来ている、幅は全て8分(24.0mm)にしてある。台は巾1尺4寸(420.4mm)、長さは胴の長さより4寸(120.1mm)長く
(即ち1尺9寸(570.6mm)ないし2尺4寸(720.7)にして)前方に蜂の出入りする足場として適当の余地を存することは
前者と異なるところはない、台の裏面には前後両端に高さ4寸(120.1mm)の板を付して足としてある。
蓋は屋根楽天 型ではなく単に平板状にて長さ1尺9寸(570.6mm)ないし2尺4寸(720.7)巾は1尺5寸(450.5mm)其の裏面の前後両端に
厚さ1寸5分(45.0mm)の桟を打って胴を覆うに都合よくしてある。胴の上には袖紙を覆い之に蓋をするのである
-引用-
「簡易巣箱」なだけあって、図も説明も簡潔です。玉利式が悪いわけではなく、蓋が平らだと風に強いなどの
利点があるとのこと。
なるほど。
タイトル : 最近蜜蜂飼育法
タイトルよみ : サイキン ミツバチ シイクホウ
責任表示 : 駒井春吉著
出版事項 : 東京:読売新聞社,明40.10
形態 : 188p;20cm
NDC分類 : 640
著者標目 : 駒井,春吉
著者標目よみ : コマイ,ハルキチ
全国書誌番号 : 40063108
請求記号 : YDM64754
西暦年 : 1907
著作権 : 保護期間満了
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最終更新日: 2015-04-08 05:13:36