文化式とドレメ式原型製図を比較
洋裁で使われる、各種原型をCADを用いて比較、それぞれの違いと特徴を考察しました。
ドレメ式原型Ⅱ(旧)、ドレメ式新原型、文化式原型(旧)、文化式原型成人女子用(新)、それから文化式原型成人男子用の五つを比較します。
同一サイズ(バスト840、背丈380、ウエスト640)に調整しました。男子でこの設定は無理がありますが、原型の比較が目的なので同じにしました。
洋裁CADを使って製図しています。
文化式原型とドレメ式原型の変遷
ドレメ式は1996年にドレメ式原型Ⅱ、2009年にドレメ式新原型が出ています。今回はこの新原型を描いてみました。
文化式は2000年に現在の新型原型に切り替わっています。
新旧原型の違い
一見してわかるのはダーツが追加されたことです。新しい原型は、より体にフィットする意図が感じられます。
また、日本人の体形も変化してきているので、これにも対応しているものと思います。
ドレメ式の新旧を比較したのが下の図です。
ピンクが旧、オレンジが新。
ダーツが追加され、前身頃が上に移動しています。肩のラインが微妙に違うのは、日本人の体格が変化したからでしょうか?
次は文化式。
青が旧、紺が新。
ドレメ式と同様に前身頃が上に移動し、ダーツが追加されています。文化式はウエストにもダーツが入り、より体にフィットした形になっています。
新原型の比較
では新原型を比較してみましょう。
紺が文化式、オレンジがドレメ式です。
後身頃はほぼ変わりませんが、前身頃は幅方向、高さ方向、ともに大分ずれています。
文化式は幅が広いですが、これはウエストダーツが入っているためでしょう。ダーツを差し引けば、ほぼ同じ幅になります。
問題は高さ方向です。ドレメ式は常に前後身頃が同じ高さになるのに対して、文化式はバストが大きくなると前身頃も高くなるように設定されています。
両者ともに意図があってこうしていると思うのですが、私は、これはドレメ式の大きな欠点であると考えます。
ドレメ式原型はバストサイズに追従しない設定になっている
下の図は文化式の原型をバストサイズだけを変えて描画したものです(洋裁CADはバストサイズを変更するだけで再描画できます)。
緑はバスト750、紺840、青緑は900です。
バストを大きくすると幅が広がるのはもちろんですが、前身頃も高くなっています。さらによく見ると前身頃ダーツの角度も大きくなっています。
服を横から見れば、前身頃の布はバストに沿って「く」の字になっています。バストの大きい人はくの山が高くなるので、くの長さ、すなわち身頃の長さも長くなります。
山が高くなればダーツのひらきも当然大きくなります。
ですから、バストが大きくなれば前身頃が高くなることは道理にかなっています。
では、ドレメ式ではどうなるでしょうか?
後身頃が全然変わっていませんが、これには理由があります。ドレメ式の場合、肩は背肩幅を別途計測して作図するためです。
今回はバストしか変更しなかったので、肩の部分は変わらないのです。
ただ、バストサイズを変えても、前身頃の高さは変化しません。胸ダーツのひらきもほとんど変化しないようになっています。
これではバストの大きな人はヘソが出てしまいます。
ヘソが出るドレメ式原型、肩が余る文化式原型
胸の部分に関しては、文化式の方がすぐれていると感じます。
ただ、文化式はバスト、ウエスト、背丈の3寸法だけで原型を描いてしまうのに対し、ドレメ式は、バスト、背丈、背幅、背肩幅、胸幅、乳頭間とたくさんの寸法を測ります。
多くの寸法を使った方がより体になじむ気がします。
上の文化式を見ると判りますが、文化式はバストの大きさに従って肩幅も増えてゆきます。実際そうなるのでしょうか?
平均すればそうなるのかもしれませんが、個々人でフィットするとは勿論限りません。結局最終的には補正が必要になのかなと感じます。
男女間の原型差
文化式の男女原型も比較してみましょう。
灰色が男子です。
男女原型についてはこちらで詳しく書いているのでご覧になってください。
最後に5つすべてを比較してみましょう。
もう、わけがわかりませんね。
最終更新日: 2019-07-18 10:18:41