西洋ミツバチ養蜂箱の設計検討
西洋ミツバチの巣箱はとても使いにくい。今年は「引き出し巣箱楽天 」を作ってみたのだけれど、いまひとつ満足感がない。そんなわけで、蜂の巣箱についていろいろ考えてみました。まずは今使っている巣箱について考えてみます。
ラングストロース式巣箱の使い方と問題点
これは2005年現在使っているラングストロース式巣箱の分解図です。
一般に西洋ミツバチの巣箱というと、このラングストロース式巣箱のことをいいます。
一番したの巣箱は女王蜂が住む箱で、新しい働き蜂を育てるために使われます。
その上にあるのは王隔板というもので、働き蜂は通れて女王蜂は通れない隙間が開いています。
その上には貯蜜箱を載せます。女王蜂が産卵できないのでこの箱には小蜂はおらず、ハチミツだけが貯められます。蜂群が大きくなると、その上に貯蜜箱を載せます。
貯蜜箱は群が大きくなるにつれて1,2,3個と上に載せてゆきます。
育児箱と貯蜜箱は用途が違うだけで、形状的には同一のものです。
この巣箱には大きな欠点があります。内検といって、定期的に巣箱の中を調べ、異常がないかを確認する作業が必要なのですが、内検でチェックしたいのは、女王蜂が元気か、とか、新しい女王が育っていないか、といった育児箱に関する事柄です。
貯蜜箱をたくさん重ねている場合は、育児箱をあけるために、全部の貯蜜箱を下ろす必要があります。
蜜入りの箱はかなり重いし、実質的に巣を解体してしまうことになるので、蜂たちも大騒ぎしてしまいます。
引き出し式巣箱(ヨーロッパの養蜂箱)
これは今年試作してみた(作っただけ)の引き出し式巣箱。
ヨーロッパで使われているものを真似して作りました。
座って内検出来る
ガラス越しに簡易内検可能
蜂が騒がない...
などの長所があるはずですが、巣の規模を一定以上大きく出来ない欠点もあります。
引き出し式巣箱-ハイブリッド型
上の巣箱をいざ使おうとしたとき、困ったことに気が付きました。
引き出し式巣箱はラングストロース式巣箱と巣枠の形状が違うので、
ラ式に住んでいた群を引き出し式の巣箱にそのまま引っ越させるわけにはゆきません。
そこで急遽作ったのがこの「ハイブリッド型」。蜂にはまず上の箱に引っ越してもらい、
下の巣枠に巣を作ってもらってから正式に引き出し式巣箱に移転...という作戦。しかし、
使ってみると、2の引き出し式巣箱よりこちらのほうが使いやすいので、結局こちらを使っています。
蜂が増えたら、ラ式巣箱を重ねて対応するので、2の巣箱のように拡張の限界がありません。
女王は引き出し式巣箱内に住まわせているので、内検は引き出し式巣箱を開けて行います。
1のラ式巣箱のように、内検のたびに上に乗っている貯蜜箱全部を外す必要がありません。
長所ばかりのようですが、使っていると困った問題が出てきました。
巣枠にどうしても凸凹が出来るので、引き出すときに隣の巣枠と接触してしまい、
ミツバチが挟まれることがあります
本家のヨーロッパ製は、巣枠の引出しは何枚かまとめて取り出す構造になっているようで、
こんな問題は起きないようです。巣枠が横に長いのも問題を助長しています。
新しい巣箱のアイデア
うなぎ巣箱(LongDeepHive)
まず考えたのが「うなぎ巣箱」蜂群が増えてきたら、巣を上に延長せず、
うなぎの寝床のように長く横に伸ばして対応します。これなら、巣の中のどの位置の巣枠でも、
自由に取り出せます。
同じような巣箱がアメリカの本に載っていました
(ABC andXYZofBEECULTUREより抜粋)。DeepHiveと呼ぶそうです。
使いやすそうですが、蜂舎の中に置くには場所をとりすぎるので不採用。
L型巣箱
うなぎ巣箱が長くて場所をとる欠点を改良したもの。貯蜜箱は育児箱の横に置く。
貯蜜箱を取り外さずに直接育児箱の中を内検できる。
貯蜜箱の蜜のたまり具合は一番上の箱を見れば下は予測できるので、積み上げてしまい、
場所をとらないようにする。これも蜂舎の中に置くには場所をとるのでボツ。
(※これを書いた時点では不採用にしましたが、現在(2011年)はこの形式の巣箱を愛用中です)
↓はそっくりな巣箱
http://www.beesource.com/eob/althive/bush/bush8.htm
T型巣箱
並列型巣箱の反対側にもう一つ育児箱をつけて2女王群にし、
蜂群を大きくして多収を狙うもの。ABCandXYZofBEECULTUREのDeepHiveを紹介する
項に記載してあった方法を図にしてみたもの。4,5と同じ理由でボツ。
http://www.beesource.com/eob/condo/に紹介されている巣箱が酷似しているけれども、
こちらは育児箱を大きくとるのが目的で、育児箱の内検を容易にするとか、多王群にする、
という目的ではないらしい。
うなぎ-引き出し式巣箱
うなぎ巣箱が場所をとる欠点を補う形の巣箱。巣枠を上に引き出すのではなく、
横から引き出すように変更。下の図のように何段も重ねて使うことで、省スペース化が可能です。
図の巣枠は20×20センチでかなり小さめにしてあります。西洋ミツバチの女王育成群や、
日本ミツバチの飼育を意図しています。本棚から文庫本を取り出すような感覚で
内検が出来るのではと思っているのですが...。
引き出し式巣箱-改良型
いろいろ考えて、結局原点に帰ろうとしたのがこの形。
ラ式巣箱の貯蜜箱は育児箱に載せず、
架台に載せる。育児箱は貯蜜箱の下に設置しておき、内検時に箱ごと引き出す。
これで2の蜂をつぶしてしまう欠点を克服。ついでに2の複雑な形状、2つの形の巣枠が
あるという欠点もなくす。
育児箱はそのままスライドできないので、一旦下に下げてから横に引き出す必要がありそう。
2006年の新作巣箱はこの形式で行く予定です。(行きませんでした)
逆止板は、来年導入してみようと思っているもので、蜂が1方向にしか通行できない道具。
土曜に育児箱の内検を行い、貯蜜箱にハチミツが貯まっているようなら逆止板を挟んでおく
(下方向の1方通行)。日曜には貯蜜箱に蜂がいなくなっているので、
スムーズに採蜜が出来るというもくろみ。
内検の効率化と採蜜の効率化で蜂の世話にかかる時間を今の半分以下くらいにまで抑えたいと思う。
最終更新日: 2019-04-02 10:11:39