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アパレル3DCADを使ったパターン製図方法

パターンの製造方法には大きく二つあり、一つは立体裁断、もう一つは平面製図です。
立体裁断とは、ボディ(人台)に布を当てて、洋服のシルエットを表現して型紙を作る方法、
平面製図は人体各部の寸法から定められた手法で線を引いてゆき、型紙楽天 とする方法。

3DCADでの製図方法

3D-CADでの製図手法は、この二つを組み合わせたような新しい手法になると思われます。
仮の寸法を用いて平面製図で変形可能なパターン楽天 を作り、これを3Dボディ(アバター)に着せます。
寸法が合ってないところがあれば、パラメーターを変えて二次元のパターンを修正します。
修正はすぐに3次元に反映されるので、3次元を見ながら適切な形状になるようにパラメーターを変えてゆきます。
パラメーターだけで追い込めない場合はダーツ等の修正を入れてパターンを書き直します。

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アナログで置き換えると、
 パターン作成→試着→パターンの修正→試着
という作業を繰り返すようなイメージです。
アナログでは手間がかかりすぎますが、3DCADではCADの中で修正、裁断、縫製、試着をすることができます。

製図の例

具体的にどのように行っていくのか、バストの大きい女性に密着したパターンを作る作業をしてみます。
3DCADは洋裁CADを使います。洋裁CADは私が開発しているフリーのアパレルCADです。一般的な3DCADと同じパラメトリック方式の設計手法を採用しています。 2DCADでしたが初歩的な3Dも使えるようになりました。
人体3Dモデルは、「産業技術総合研究所 AIST/HQL人体寸法・形状データベース2003」を利用させていただきました。
原型型紙は文化式原型成人女子を使います。
普通は原型型紙をベースにして新たなパターンを引きますが、今回は原型パターンをそのまま展開変形追記して3Dデータにフィットしたパターンを作ります。
 変形前後の比較画像

原型型紙のサイズ調整

とりあえず、原型型紙を3Dデータに着せてみます。

原型サイズは3Dデータに合っていないので、フィットしていません。 布の伸びを見てみるとバスト周りがきつく、断面を見るとウエストの布が余っています。 バスト周りの布の伸び ウエストの隙間

原型型紙の製図方法にはいろいろありますが、どれもいくつかの身体寸法入れて製図して行きます。
文化式では入力寸法が少なく、バスト、ウエスト、背丈の三つです。この少ない寸法でも標準的な体型の人であれば補正せずにそのまま使えるようです。
3Dデータのサイズはバスト890、ウエスト620、背丈390mmなのでこれを入力して、原型型紙の形状を変えます。

バスト周りの布の伸び

ウエストの隙間 縦断面


原型型紙の補正

原型型紙は標準的な体型の人にはぴったり合うのですが、この人のように標準から外れているとあちこち不具合が起きてしまいます。
この人体データの場合、袖ぐりの前が開きすぎていて後ろがきつい、肩幅が広すぎる、胸の脇あたりで布が余っている、バストポイントがずれている。といった不具合がみてとれます。
原型型紙のデータの記述を書き直して、数値を変えるとこれらの形状が変わるようにしました。 2Dの変更後、3Dを見ながらパラメーターを変更して3Dデータにパターンがしっくりとフィットするように追い込んでいきます。
下の動画は、前身頃の高さ、肩幅、袖ぐりの前後位置、バストポイント、バストダーツの開く角度、の形状を変更しています。

下の画像は補正前後の原型型紙です。
補正前後の原型型紙

補正前よりも3Dデータに沿った形状になりました。

アンダーバストの部分を密着させる

バストからウエストにかけて、パターンの三次元形状は、直線的に絞られていくので、アンダーバストの部分では服が体に密着していません。
次はこの部分を密着させるように型紙を変更します。

服を密着させるには、その部分の布の幅を少なくすればすぼまるので、上の図の赤丸辺りを切り取れば良いのですが、こんな形で切り取ったら変なシルエットになってしまいます。
そこで、切り取りやすいように原型型紙をプリンセスラインに展開します。

原型型紙をプリンセスラインに展開

原型型紙を縦長の短冊状の身頃に分割します。いわゆるプリンセスラインの型紙になります。
まずバストから袖ぐりへ伸ばしているダーツを肩に移動させます。
ダーツの付け替え

ウエストダーツは一つにまとめてバストからウエストラインに落とします。
ダーツの付け替え

直線ではうまく繋がらないので、なめらかな曲線に書き直します。これでプリンセスラインの型紙になりました。
プリンセスパターンの作り方

プリンセスラインでは下の図の緑の部分を切り取れば、アンダーバストの部分で服が違和感なく体に密着してくれそうです。
アンダーバストの切り取り


アンダーバスト部分のパターン変更

2次元モデリングを変更して、形状を変更しました。
形状は複数のパラメーターを操作することで変えられるようにしておきます。


プリンセスラインに型紙が変わったため、縫い合わせ設定も変わるので、再設定したのち、型紙を人体3Dデータに着せます。


着せた状態でアンダーバスト部分の形状を変え、最も適切な形状となるパラメーターで固定します。


アンダーバスト部の型紙補正、こんな感じになりました。
アンダーバスト部の型紙補正


脇ダーツの追加

アンダーバストの部分を修正したら今度はバストの脇の部分に布の余り部分ができるようになりました。今度はこれをなくすためにダーツを追加します。
バスト脇のたるみ

ダーツは下の動画の要領で作図します。

このダーツもアンダーバスト部分と同様にパラメーターを変えることで変更できるようにしておきます。

再び3D人体データに着せて、ダーツの位置や深さ、角度等を3Dを見ながら修正して最適なパラメーターを探します。こんな感じで修正できました。
胸脇ダーツの追加前後


胸間ダーツの追加

胸の間も体に沿うように変更してみます。
センターライン断面では布は短くすればよく、バスト高さの断面で布は長くすれば体にフィットします。
原型型紙の断面

そこで下の図のような形状のダーツを追加しました。
これも脇ダーツと同じように、パラメーターで形状を変えられるようにしておき、3dデータを見ながら最適なパラメーターを決めます。

こんな感じになりました。
胸の谷間を強調するパターン


結果と3D-CADの現状

3DCADを用いて、補正なしの原型型紙から、体にフィットした型紙へ変更することができました。
従来であれば着る人の形の人台を作って立体裁断でパターンを作ったり、平面製図でパターンを作り、試着を繰り返すなどして修正する必要がありました。
原型型紙の補正

将来的には従来の方法よりここで述べた3D-CADを用いた手法の方が効率的になると思われます。
現状では、CADの完成度が低いうえ、CADでの布の物性の扱い方や人体3Dデータの精度が影響して、バーチャル世界と実世界の差が発生したりするため、まだ実用的とはいえません。
バーチャル服と現実の服

今後実績を積み上げて精度をあげてゆきたいと思っています。

最終更新日: 2020-08-11 14:03:51

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Author: Tomoyuki Ito

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