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オリジナル怪談 第4話:ゆるキャラ

佐野栄子は東京に暮らす27歳の主婦。小さな娘がいるためにパートで仕事をしながら幼稚園に通う娘を育てている。
朝娘を幼稚園にとどけて仕事に向かい、早上がりして娘を迎えに行くのが平日の日課。
幼稚園への行き帰りは、いつも近所の公園を通るようにしている。

ぬいぐるみ

その日も娘の手をひいて公園を歩いていたのだが、ふと娘に手をひかれて振り向いた。
「ママー、クモモンが呼んでるー」
ベンチの上に誰かが忘れていったのであろう、ゆるキャラのぬいぐるみが置かれていた。
「クモモン、一緒に帰りたいって言ってるー」

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持ち主がいるのだから、勝手に持ち帰るわけにはいかない、娘をなだめて帰ろうとするが、娘は頑として言うことを聞かない。
疲れて家に早く帰りたかった栄子は、根負けしてぬいぐるみを娘に持たせることにした。
小さなぬいぐるみで、きっと何かのおまけにもらったものであろう。高価なものではないから、落とした人も探さないに違いない。
クモモンはテレビの横に置かれた。娘はたいそう気に入ったようで、しきりに何か話しかけている。
可哀想なのはプードルのプー。今まで娘のお気に入りだったものが、この日から相手にされなくなってしまった。
プーはクモモンが嫌いで、しきりにクモモンに向かって吠えかかっている。
縫いくるみ一つでこんなに騒々しくなるものなのかと、栄子は苦笑した。

公園

毎朝、娘はクモモンを持って出かけるようになった。
「クモモン、人を探してるんだってー」
「だから、公園に連れて行くの。でも夜は一人で淋しいから、うちに泊まりたいんだってー」
娘はいつの間にか自分の物語を作り上げている。朝、娘は拾った公園のベンチにクモモンを置く。夕方、クモモンを拾って家に帰る。
ぬいぐるみはなぜか盗まれることもなく、朝置いた場所にそのまま座っていた。珍しいものではない。誰も持ち帰ろうと思わないのであろう。

髪の毛

そうした毎日が続いたある晩のこと。プーの機嫌が悪く、ぬいぐるみに吠えかかる。そのうちに噛みついて振り回し始めた。
止めさせようとぬいぐるみを掴んで引っ張ったのだが、勢い余ってぬいぐるみを破ってしまった。
中から出てきたものを見て、栄子は思わず悲鳴を上げてしまった。書斎にいた夫が驚いて飛び出してきた。
ぬいぐるみから出てきたもの、それは綿ではなく、大量の毛髪だったのである。

言い訳

なんと気持ち悪いものを家に置いていたのだろう。
栄子は毛髪を拾い集め、無残な姿になったぬいぐるみとともに2重に袋へ包んで捨ててしまった。
娘には「クモモンは人が見つかったから帰った」と言い訳することにした。
翌朝娘にその話をすると、意外なことにたいそう喜び、
「あー、やっと見つかったんだー。よかったね。お母さんもクモモンの声、聞こえるようになったんだね」と話した。
栄子は夫と顔を見合わせ、言葉を失った。

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半年後

自分や娘たちに何か悪いことが起こるのではないかと心配していたが、結局なにも起こらなかった。娘は縫いぐるみのことなどすぐに忘れてしまったし、 プーは再び娘の遊び相手に戻れて喜んでいる。栄子自身にも何ら変わったことはない。
母娘は今まで変わることなく公園を抜け、幼稚園へ通い続けた。
3か月ほどたったある日のこと。公園のベンチをふと見ると、またあのぬいぐるみが置かれているのが目に入った。
娘はまだそれに気付いていない。「あ、お母さん、買い物を思い出した。引き返そう」そういって栄子は娘の手を引き、公園を離れた。
近所のスーパーで適当に買い物を済ませ、娘を連れて家に帰ると、今度は一人で公園へ向かった。
ベンチの上に、ぬいぐるみが置かれている。栄子はそれを取り上げると、ヒールで何度も踏みつけ、近くの屑かごへ放り込んだ。
「お前が何者か知らないが、娘の前には二度と現れるな」そう言い捨て、家に帰っていった。

最終更新日: 2016-07-05 07:53:56

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