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オリジナル怪談 第11話:紅葉

「文筆業をされているのでしたら、時間が自由に使えてよろしいですね」
よく言われるが、実際にはなかなか自由な時間はとれない。
勤め人なら、時間契約だから、ONとOFFははっきりしている。

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自営業の場合、仕事を断ってしまったら、次もらえるかどうかが分からない。
だから、来た仕事はなるべく断らずに、しかも入念に仕上げる。結局、年がら年中仕事していることになる。
仕事無いよりはある方がはるかにましだ。仕事を放置して休むなんて、とんでもない。

趣味

そうはいっても、毎年秋の紅葉シーズンの山歩きだけは十分に時間をとって楽しむことにしている。
趣味は山歩きなのだが、紅葉の頃が一番美しいし、空気も澄み渡っていて心地よい。

そんなわけで、今年も北関東にある岩だらけの山にやってきたのだが...
これはどうしたことだろう?自分は岩場に横たわっている。疲れて一休みしているうちに熟睡してしまったのかな?
記憶がない。そういえば最近2か月ほどは忙しく働いた。疲れも相当溜まっている。年齢も初老に近づいてきた。こんなこともあるのかもしれない。
起き上がり、登山道に戻った。

景色

まだ正午くらいの時刻だ、それほど寝てはいない。いつもより遅れてはいるが、夕刻までには余裕で下の駐車場に置いた車まで戻れるだろう。急ぐ必要なない。
それにしても、今日は人少ないな。いつものシーズンならたくさんの人が登っているから、道傍で休憩している人にあいさつしたり、若者に追い抜かれたりするものなのだが...今日は全然会わない。
目がかすむ。視界の開けたところで休憩を入れたが、遠くに見える山々は色あせた感じで、紅葉シーズンの鮮やかさがない。
疲れは目からくる。だが体の方は辛くない。ふわふわしてむしろ軽く感じる。机に座って文章ばかり書いているから、目だけが疲れるのだろう。

しかし、なんだろうか、この景色。まるで冬のようだな。
(あれ?目がおかしいのじゃないのか)よく見ると木々に葉がついていない。これじゃあ紅葉もないわけだ。
一体どうなっているのだろう、異常気象にもほどがあるよ。それとも、忙しく働きすぎて季節を間違えて登ってしまったのかなぁ...まさか(笑)

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岩場

目的地に着いた。
山の中腹の展望台。登ろうとすればまだまだ先はあるけれども、毎年ここで引き返すことにしている。
目的は山登りというよりは、むしろ景色を楽しむためだから、ゆっくり登ってゆっくり下りればよい。この先は険しくなっていて、景色を楽しむ余裕もなくなってしまう。
展望台というよりは、尾根から突き出した巨大な岩のてっぺんが展望台のようになっているだけのものだ。
平らな場所はちょっとだけ。その先は断崖絶壁になっていて、ここからの眺めが最高なのだ。
さっそくカメラを取り出して、撮影する。崖ギリギリまでにじり寄るとよい写真が撮れるのだ。
やっぱり今日の風景はさえないね。遠くの山々も、みんな寒々としている。
もうちょっと前へ出てみようか、もう一歩踏み出した足に、地面の感触がなかった。

あ!思ったがもう遅い。体がものすごい勢いで落ちてゆく。
生まれてからの様々な出来事が映画のように流れ、激しい衝撃で体が砕け散るのを感じた。



どうしたのだろう?なぜか岩場に横たわっている。疲れて一休みしているうちに熟睡してしまったのかな?
記憶がない。そういえば最近2か月ほどは忙しく働いた。疲れも相当溜まっている。年齢も初老に近づいてきた。こんなこともあるのかもしれない。
起き上がり、登山道に戻った。

最終更新日: 2018-07-23 04:56:06

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Author: Tomoyuki Ito

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