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オリジナル怪談 第10話:美霊の泳ぐプール

先月からフィットネスクラブに付属するプールに通うことにした。
年に一度の人間ドックで医者から「運動しなさい」と言われたためだ。
もう5年も単身赴任を続けていて外食が多く、運動する機会も減った。40代半ばになったから、生活習慣病も気になってくる。
そんなわけで、週に1回、プールで泳ぐことにしたのだ。
フィットネスクラブには走ったり筋トレする器具もあるのだが、あまり苦しいことはしたくない。
マイペースで泳ぐのは気持ちいいし、若い女性の水着姿も見れるからとスケベな気持ちもあり、プールの方にしたのだ。
水着と水中眼鏡、プールではキャップをするのがルールだから、水泳キャップ。これだけ買いそろえた。

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落胆

ちょっと残念だったのは、予想に反して若い女性が全然いないことだった。高齢か、肥満の女性ばかりが目につく。
水泳は足や腰に負担をかけないので、糖尿病になってしまった人や、予備軍の太った人が医師に言われてやってくる、というケースが多いらしい。
もちろん、主目的はそっちではないから、週に一回水曜日と曜日を決めて通うようにした。水曜日は会社の定時退社日なので早く帰れるのだ。

黒髪

プールの使いかたは決められている。 レーンごとに歩く人、ゆっくり泳ぐ人、普通、早く泳ぐ人に分けられている。一つのレーンの中を、右側通行でぐるぐる回る。一つのレーンを独占することはできないから、すれ違う時は伸ばした腕がぶつからないように気を遣う必要がある。追い越しは禁止。
自分の泳ぐ速さに見合ったレーンに入り、泳げばよいのだ。
一番端は水中歩行用、隣りは歩く人とゆっくり泳ぐ人、普通に泳ぐ人と速く泳ぐ人のレーンは2つづつ割り当てられている。
私の入るレーンは、いつも「普通」だ。

ある晩、いつものように泳いでいると、長い黒髪をたなびかせて泳ぐスタイルの美しい女性とすれ違った。「あれ、あんな人いたかな?」
水の中で思わず振り返ってしまった。
ターンして再び泳ぐと、またすれ違った。今度は女性がこちらを見つめ、微笑みかけてきた。
おじさんとはいえ、男だから悪い気はしない。思わずにやけてしまい、水を飲みこんでしまった。
もう一度ターンして泳ぐと、今度はだいぶ手前ですれ違った。あ、すごい速さで泳いでくる。
男としては、女性に追いつかれるのは気持ちの良いものではない。自分もスピードを上げて泳ぐ。そしてターン。
距離がものすごく縮まっている。(なんでそんなに速く泳ぐんだ?ここは普通のレーンだぞ)そう思っているうちに追いつかれた。
足に女性の手がかいた水の水圧が伝わる。

「あ!」

足を掴まれた!思わず泳ぎを止め、振り向くと、女が笑いながら言った「私と一緒に来て、お願い」

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救助

気がつくと、部屋のベットで寝ていた。フィットネスクラブのトレーナーの若者が顔を覗き込んでいる。
「あ、気がつかれましたね。プールで溺れたんですよ。足がつってしまったようですね」
「しばらくこちらの休憩室で休まれてください」そう言って出ていってしまった。
さっきの出来事はなんだったのだろう?女性のことは何も言わなかったから、さっきの黒髪の女性は自分が勝手に作りだした幻か...
いい年していやらしいこと考えたるから、そんなもの見てしまうんだな。そういえば最近忙しくて残業続き。疲れがたまっているのかもしれない。思わず苦笑してしまった。

(それにしてもあの女性、長い黒髪を水にたなびかせて、自分好みの女性だったなぁ)

その時、違和感のあることに気付いた。プールでは水泳キャップ着用が義務だ。あんなに目立つ髪で泳いだら、すぐにトレーナーさんに見とがめられてしまう。
やっぱりさっきの女性は幻なのか。今までこんな経験したことないな。相当疲れているに違いない。
早々に帰って寝てしまおうと思い、ベットから身を起こす。すると、足が引きつる感覚がある。見てみると、長くて黒い髪が何本も足に巻き付いていた。
思わず取り乱してしまった。部屋を出て隣のトレーナー室へ入ろうとすると、中から陽気な声が聞こえてきた。

「またスケベおやじが引っ張られたんだってな」
「隣りで寝てるよ。しっかし、おやじ好きの幽霊だね、あはは」

最終更新日: 2017-07-18 09:16:04

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